『五七五の夏』(万乃華れん・作/黒須高嶺・絵)
昼ごろから天気予報通り雨が降り出し,気温も上がらず,寒い日でした。
乾燥注意報が続いていたので,この雨を待っていた方もいたでしょう。インフルエンザの流行もおさまってくれるかな。
立春が過ぎ,お雛様を飾りました。
華やぎとともに春がやってきたようです。
「五・七・五」や「五・七・五・七・七」の俳句や短歌は,そこに心や風景,風情を詠み込みます。
それぞれ奥深いものですが,子供でも言葉遊びとして楽しむことができます。
小学6年生の夏を描いた『五七五の夏』(文研出版・刊)で,“五・七・五”を楽しみました。
本書の五・七・五は,川柳です。
主人公の神田順平は,小学6年生。両親は,地域で人気の八百屋を営んでいます。
ある日の新聞に,両親の名が載っています。
最優秀賞 「あかぎれて お酒つづ手を ネコの手に」 「さかずきを おいてネコの手 包みこむ」 神田 一平/みさ子夫婦川柳に応募し,それが最優秀賞に輝いたことを伝える記事でした。 これを見て,二人は“受賞のわけ”を言い合います。そこで,
母ちゃんが,「苦労した この手ほしがる ひかりもの」 対して,父ちゃんは,「軍手の手 イワシにサンマ よく似合う」と。 八百屋の人気の一つが,“かけあい”です。 例えば,ネギを選んでいたオバサンに声をかけていて,
「あら,そうさ。これなんか,どう?」 「あら,よさそうね。じゃあ,それにしとくわ」 「へい,まいど。安くしとくよ。『美人くりゃ 目じりさがって 値もさがる』ってね。」 あーあ,レジから出てきた母ちゃんも加わった。 「いいけどさ あんたのこづかい へるだけよ」 「そりゃこまる 奥さんおねがい これ買って」 「その調子 ほうれんそうが しなびそう」 あっはっはっは。と,みんなが笑い出したところで,父ちゃんは声をはりあげる。 「さあ,ほうれんそう,買った,買ったー」といった調子で,しっかり笑いをさそって“美味しい野菜”を勧め,客は笑顔で買っていきます。 順平の学級に“二人の先生”が登場し,川柳を教えてくれます。 そのお題は『手』。隣の席の子と手を見せ合って,川柳を読みます。 順平の隣は千夏…。 小学生の“どきどき”,大人との“どきどき”,野菜を育てる“どきどき”…。 川柳を楽しみながら,いろいろ自分の気持ちを考えさせられます。 “一人目の先生”が川柳のイロハを教えます。そのなかで,こんなことも言っています。
「ただ,気持ち悪いとか,きたないとかを使っちゃいけない。川柳っていうのは,じんわりとわいてくる笑いがいいんだ。やんわりしたユーモアで詠んでみような」この本に合わせて,小学校で川柳を詠むのも楽しそうです。先生,いかがですか。
もくじ ありえねえ もっと,ありえねえ 汗ばむ手 『手』 ピアノ発表会 鈴木のかっちゃん ハデおばさん あと,六センチ あとがき【備忘録メモ】※本書には出てきません。 「俳句と川柳」 ・俳句も川柳も「五・七・五」の17音定型。 ・俳句には「季語」が必用。川柳では,特にこだわらない。 ・俳句には「切れ字」が必用。川柳では,特にこだわらない。 ・俳句は,主に「文語」表現。川柳は「口語」が普通。 ・俳句は,主に「自然」を対象に詠むことが中心。川柳では「生活」や「出来事」を対象に切り取ることが中心。 ・俳句は「詠む」と言う。川柳では,詠むよりも「吐く」「ものす」などと言うそうです。