集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『五七五の夏』(万乃華れん・作/黒須高嶺・絵)

雛0205。 昼ごろから天気予報通り雨が降り出し,気温も上がらず,寒い日でした。  乾燥注意報が続いていたので,この雨を待っていた方もいたでしょう。インフルエンザの流行もおさまってくれるかな。  立春が過ぎ,お雛様を飾りました。  華やぎとともにがやってきたようです。  「五・七・五」や「五・七・五・七・七」の俳句や短歌は,そこに心や風景,風情を詠み込みます。  それぞれ奥深いものですが,子供でも言葉遊びとして楽しむことができます。  小学6年生の夏を描いた『五七五の夏』(文研出版・刊)で,“五・七・五”を楽しみました。  本書の五・七・五は,川柳です。  主人公の神田順平は,小学6年生。両親は,地域で人気の八百屋を営んでいます。  ある日の新聞に,両親の名が載っています。
最優秀賞  「あかぎれて お酒つづ手を ネコの手に」  「さかずきを おいてネコの手 包みこむ」       神田 一平/みさ子
 夫婦川柳に応募し,それが最優秀賞に輝いたことを伝える記事でした。  これを見て,二人は“受賞のわけ”を言い合います。そこで,
母ちゃんが,「苦労した この手ほしがる ひかりもの」 対して,父ちゃんは,「軍手の手 イワシにサンマ よく似合う
と。  八百屋の人気の一つが,“かけあい”です。  例えば,ネギを選んでいたオバサンに声をかけていて,
「あら,そうさ。これなんか,どう?」 「あら,よさそうね。じゃあ,それにしとくわ」 「へい,まいど。安くしとくよ。『美人くりゃ 目じりさがって 値もさがる』ってね。」  あーあ,レジから出てきた母ちゃんも加わった。 「いいけどさ あんたのこづかい へるだけよ」 「そりゃこまる 奥さんおねがい これ買って」 「その調子 ほうれんそうが しなびそう」  あっはっはっは。と,みんなが笑い出したところで,父ちゃんは声をはりあげる。 「さあ,ほうれんそう,買った,買ったー」
といった調子で,しっかり笑いをさそって“美味しい野菜”を勧め,客は笑顔で買っていきます。  順平の学級に“二人の先生”が登場し,川柳を教えてくれます。  そのお題は『手』。隣の席の子と手を見せ合って,川柳を読みます。  順平の隣は千夏…。  小学生の“どきどき”,大人との“どきどき”,野菜を育てる“どきどき”…。  川柳を楽しみながら,いろいろ自分の気持ちを考えさせられます。  “一人目の先生”が川柳のイロハを教えます。そのなかで,こんなことも言っています。
「ただ,気持ち悪いとか,きたないとかを使っちゃいけない。川柳っていうのは,じんわりとわいてくる笑いがいいんだ。やんわりしたユーモアで詠んでみような」
 この本に合わせて,小学校で川柳を詠むのも楽しそうです。先生,いかがですか
  もくじ ありえねえ もっと,ありえねえ 汗ばむ手 『手』 ピアノ発表会 鈴木のかっちゃん ハデおばさん あと,六センチ あとがき
【備忘録メモ】※本書には出てきません。    「俳句と川柳」 ・俳句も川柳も「五・七・五」の17音定型。 ・俳句には「季語」が必用。川柳では,特にこだわらない。 ・俳句には「切れ字」が必用。川柳では,特にこだわらない。 ・俳句は,主に「文語」表現。川柳は「口語」が普通。 ・俳句は,主に「自然」を対象に詠むことが中心。川柳では「生活」や「出来事」を対象に切り取ることが中心。 ・俳句は「詠む」と言う。川柳では,詠むよりも「吐く」「ものす」などと言うそうです。