『小説 君の名は』(新海誠・著)
つい,「寒〜い!」の声が出てしまいました。
感じたり,思っているだけでなく,声になっていました。
陽射しがなく,気温も上がらず,ストーブや炬燵が恋しい一日でした。
改めて書くことではないでしょうが,映画『君の名は。』(新海誠監督)は,累計興行収入は180億円,国内の歴代興行収入ランキングでは『もののけ姫』(宮崎駿監督)に次ぐ7位にランクインするなど大ヒット作品です。
さらに,映画に登場する風景が見られる飛騨市は,“聖地”として訪れる人が急増しているそうです。
その作品の原作小説『小説 君の名は。』(角川文庫)です。
今回,この本が読みたくて手にしたのではなく,ネットで「○○ポイントを使わないと…」と本のコーナーを見ると,トップにあって選んだものです。
映画が話題になっていることは承知していましたが,話の内容は知りませんでした。
懐かしい声と匂い,愛おしい光と温度。 私は大切なだれかと隙間なくぴったりとくっついている。分かちがたく結びついている。乳房に抱かれた乳呑み児の頃のように,不安や寂しさなんてかけらもない。失ったものは未だひとつもなく,とても甘やかな気持ちが,じんじんと体に満ちている。 ふと,目が開く。 天井。 部屋,朝。 ひとり。 東京。 ── そうか。 夢を見ていたんだ。私はベッドから身を起こす。こうして始まる「私 三葉」と「俺 瀧」との物語です。 それぞれが“一人称”で語る景色と出来事に,引き込まれます。 巻末の解説で,川村元気氏が,次のように述べています。
人は不思議な生き物だ。大切なことを忘れ,どうでもいいことばかり覚えている。メモリーカードのように,必要なものを残し,不必要なものだけを消すようにはできていない。それはなぜだろう,と考え続けてきた。 でもこの小説を読んで,少しだけわかった気がする。 ひとは大切なことを忘れていく。 けれども,そこに抗おうともがくことで生を獲得するのだ。本編を読んでいた時は,思い出しませんでしたが,川村氏の解説を読みながら思い出した話がありました。 出典がはっきりしませんが,「今日という一日」という話です。題名もいろいろ,紹介される場面もいろいろですが,“忘れる”ことの意味,そして“今”の価値を考えさせられます。 人は,必要なものを消してしまったのか。不必要なものを消せないのか。…。 三葉と瀧が言います。
私は,俺は,だれかひとりを,ひとりだけを,探している。 ****** そして俺たちは,同時に口を開く。 いっせーのーでとタイミングをとりあう子どもみたいに,私たちは声をそろえる。 ── 君の,名前は,と。映画は見ていませんが,“不思議な世界”に誘われて,「こんなことあったかも。」と絵が浮かんできます。 すでに映画を観る方も,これから観る方も,とても楽しめる作品だと思います。 もちろん,映画を観ない方も,楽しめる一冊です。
目次 第一章 夢 第二章 端緒 第三章 日々 第四章 探訪 第五章 記憶 第六章 再演 第七章 うつくしく、もがく 第八章 君の名は。 あとがき 解説【関連】 ◇もうひとつの『君の名は。』がここに。|新海誠の本(株式会社KADOKAWA) ◇映画「君の名は。」に一部イメージとして登場する飛騨市を満喫しよう!|おすすめコース(飛騨市公式観光サイト「飛騨の旅」) ◇飛騨市は新海誠監督の最新作「君の名は。」を応援しています。(飛騨市) ◇映画『君の名は。』公式サイト