集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『小説 君の名は』(新海誠・著)

花1110。  つい,「寒〜い!」の声が出てしまいました。  感じたり,思っているだけでなく,声になっていました。  陽射しがなく,気温も上がらず,ストーブや炬燵が恋しい一日でした。  改めて書くことではないでしょうが,映画『君の名は。新海誠監督)は,累計興行収入は180億円,国内の歴代興行収入ランキングではもののけ姫宮崎駿監督)に次ぐ7位にランクインするなど大ヒット作品です。  さらに,映画に登場する風景が見られる飛騨市は,“聖地”として訪れる人が急増しているそうです。  その作品の原作小説『小説 君の名は。』(角川文庫)です。  今回,この本が読みたくて手にしたのではなく,ネットで「○○ポイントを使わないと…」と本のコーナーを見ると,トップにあって選んだものです。  映画が話題になっていることは承知していましたが,話の内容は知りませんでした。
 懐かしい声と匂い,愛おしい光と温度。  私は大切なだれかと隙間なくぴったりとくっついている。分かちがたく結びついている。乳房に抱かれた乳呑み児の頃のように,不安や寂しさなんてかけらもない。失ったものは未だひとつもなく,とても甘やかな気持ちが,じんじんと体に満ちている。  ふと,目が開く。  天井。  部屋,朝。  ひとり。  東京。  ── そうか。  夢を見ていたんだ。私はベッドから身を起こす。
 こうして始まる「私 三葉」と「俺 」との物語です。  それぞれが“一人称”で語る景色と出来事に,引き込まれます。  巻末の解説で,川村元気氏が,次のように述べています。
 人は不思議な生き物だ。大切なことを忘れ,どうでもいいことばかり覚えている。メモリーカードのように,必要なものを残し,不必要なものだけを消すようにはできていない。それはなぜだろう,と考え続けてきた。  でもこの小説を読んで,少しだけわかった気がする。  ひとは大切なことを忘れていく。  けれども,そこに抗おうともがくことで生を獲得するのだ。
 本編を読んでいた時は,思い出しませんでしたが,川村氏の解説を読みながら思い出した話がありました。  出典がはっきりしませんが,「今日という一日」という話です。題名もいろいろ,紹介される場面もいろいろですが,“忘れる”ことの意味,そして“今”の価値を考えさせられます。  人は,必要なものを消してしまったのか。不必要なものを消せないのか。…。  三葉と瀧が言います。
 私は,俺は,だれかひとりを,ひとりだけを,探している。 ******  そして俺たちは,同時に口を開く。  いっせーのーでとタイミングをとりあう子どもみたいに,私たちは声をそろえる。  ── 君の,名前は,と。
 映画は見ていませんが,“不思議な世界”に誘われて,「こんなことあったかも。」と絵が浮かんできます。  すでに映画を観る方も,これから観る方も,とても楽しめる作品だと思います。  もちろん,映画を観ない方も,楽しめる一冊です。
  目次 第一章 夢 第二章 端緒 第三章 日々 第四章 探訪 第五章 記憶 第六章 再演 第七章 うつくしく、もがく 第八章 君の名は。 あとがき 解説
【関連】   ◇もうひとつの『君の名は。』がここに。|新海誠の本株式会社KADOKAWA)   ◇映画「君の名は。」に一部イメージとして登場する飛騨市を満喫しよう!|おすすめコース飛騨市公式観光サイト「飛騨の旅」)   ◇飛騨市は新海誠監督の最新作「君の名は。」を応援しています。飛騨市)   ◇映画『君の名は。』公式サイト
映画『君の名は。』公式サイト