集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『落語小説集 芝浜』(山本一力・著)

花1029。  今日は,天気のよい一日でした。  好きな作家の一人 山本一力氏の本を読みました。  山本氏の描く深川界隈は,まるで“そこに自分がいる”ように見えてきます。以前,新刊に「山本一力」の文字を見つけると,すぐ手に取っていた時期がありました。  ブログで“この前”紹介したのを確かめると,2011年8月13日の『ほかげ橋夕景』でした。「こんな前なんだ」と,少し申し訳なく思いました。  今回読んだのは,落語の“人情噺”を小説にした『芝浜: 落語小説集』(小学館・刊)です。  作品は,書名の「芝浜」をはじめ,登場人物がすべて実直な善人で,明るい人情噺の「井戸の茶碗」,船場の商家を舞台にした「百年目」,一文無しの絵描きが宿代の代わりに描いた絵から意外な展開となる「抜け雀」,江戸末期の名脇役だった三世仲蔵の自伝的髄筆をもとに作られた「中村仲蔵」の5作です。  この中で,「井戸の茶碗」と「中村仲蔵」の落語を聴いたことがなく,新鮮でした。  今年,NHKテレビで「超入門!落語 THE MOVIE」が始まりました。3月,7月の特番,10月からはレギュラー放送となりました。  噺家の語りに合わせて“アテブリ芝居”が演じられていき,落語の“世界”を楽しませてくれます。  また,先日の「クローズアップ現代+」が,「“平成落語ブーム”とかけて  若者と解く その心は!?」と落語を取り上げていました。  こうした「落語家の噺」で描かれる「落語の“世界”」ですが,本書は「落語の筋」から綴られる“山本氏の人情話”です。  本書の一話を読んだ後,古今亭志ん朝の噺を聴きました。  「なるほど」と「へ〜」と…  落語の噺に,新しい魅力を加えてくれる“人情噺”でした。  初めての「井戸の茶碗」のなかで,「玄猪の日」を知りました。そして,
「カネにいやしいやからが大きな顔をしている昨今,まことにあっぱれな三人だろうが」  鈍次も一本気で義侠心に篤い男だ。
など,登場人物に惚れました。  「百年目」の“旦那”が番頭に
「今年も残り十ヵ月もないが,存分にお客様をもてなし,仲間内では大江屋の見栄を張ってくれ」 (略) 「費えを惜しんでいては商いの切っ先が鈍る。上手なカネの遣い方を,ぜひにもおまえから奉公人に伝授してやってもらいたい」
と語り,大店のあり様に感じました。 【参考】 「芝浜」   ◇古今亭志ん朝 (三代目) Shincho Kokintei 芝浜 落語 RakugoYouTube) 「井戸の茶碗」   ◇三代目古今亭志ん朝 - 井戸の茶碗YouTube) 「百年目」   ◇米朝 百年目YouTube) 「抜け雀」   ◇桂歌丸  抜け雀YouTube) 「中村仲蔵」   ◇落語 三遊亭圓楽 中村仲蔵YouTube