集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『ロケット・ササキ』(大西康之・著)

ススキ1018。  朝から綺麗な青空が広がり,“暖かい日”になりました。  当地では,天気予報ほどに気温は上っていませんが,“熱い風”を感じました。驚きです。  明日も良い天気のようです。“暑さ”に備えたいと思います。  気象予報士が,「秋の高気圧を前線が分断して…。」と,いつもの“安定した秋”にはならないと,これからの天気を解説していました。  お天道様,外れることを期待しています。  表紙に「ジョブズ」「エンジニア」があり,タイトルの「ロケット・ササキ」から,宇宙開発に係った方の話かと思い,少しページを繰ると,“電気”,“エレクトロニクス”に係った佐々木正氏のことを綴っているようです。  “エレクトロニクス”といえば,松下幸之助氏,井深大氏,盛田昭夫氏といったNational(ナショナル)SONYソニーの方々が出てきて,佐々木氏の名をあげる人は少なそうです。  電子立国日本の礎を築いた「伝説のエンジニア」と称される人物について書かれた『ロケット・ササキ:ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社・刊)です。  研究者として生きていく決意をした佐々木氏が,時代に翻弄され(縁?)早川電気(シャープ)に入社し,“電子立国日本の未来”を切り拓いていく姿が描かれています。  「ロケット・ササキ」と称されたのは,その爆発的な着想力によるものです。  これは“異端”であったと思います。  多くの異端は日が当たらずに沈んでいってしまいます。佐々木氏は,自身の意思とは違っていたかもしれませんが,「時」と「場」を得て,電子立国日本の未来を切り拓いていくことになります。
 トランジスタからLSI,そしてMPUへ  シャープの技術トップとして半導体の開発競争を仕掛け続け,日本を世界のエレクトロニクス産業の先頭へ導いた男。インテル創業者が頼り,ジョブズが憧れ,孫正義を見出した佐々木正の突き抜けた人生。
 その発想とエネルギーに圧倒されながらも,こうした人物が若い世代から“次々と”出てくるよう応援したいと思います。  読書メモより
○ 当時,中学は5年制だったが,特待生の正は4年で台北高等学校に進んだ。成績の良かった正は,中学,高校と授業料を免除され,両親を喜ばせた。 ○ 得意の数学で二つの管がぴったり合うように計算した。すると熱帯のマンゴーと北方のリンゴが見事に繋がり,リンゴのような形のマンゴー「リンゴマンゴー」の実を結んだ。  「そうか,異質なものでも工夫すれば接ぐことができる。違うものを接げば,そこから新たな価値が生まれるのか」 ○ 最初に佐々木を襲った感想は,敗戦のショックでも戦争が終わったことへの安堵でもなかった。(科学者として死なずに済んだ) ○ 生産工程全体が,誰かが失敗することを織り込んだ設計になっているのだ。シューハートはこう説明した。  「製造工程において品質を悪化させるのは『変化』だ。製造工程における『変化』をどれだけ減らせるか,が品質の高さにつながるのだよ」 ○ 「いいかい,君たち。わからなければ聞けばいい。持っていないならば借りればいい。逆に聞かれたら教えるべきだし,持っているものは与えるべきだ。人間,一人でできることなど高が知れている。技術は世界みんなで共に創る『共創』が肝心だ」 ○ 「そうか,液晶か。君が言うんなら,一度やってみるか。ああ,田中さん,RCAのボンダーシュミットさんに電話して。向こうはいま何時だい」  (この人は,いつもこんなスピードで仕事をしているのか)  和田はその場でRCAの技術担当役員に電話をかけようとする佐々木の反応の速さに驚いた。それに,この人脈。(略) (とんでもない人だなあ) ○ 市場を牽引したのは松下電器,日立といった大企業ではなく,シャープ,カシオという中堅企業だった。カシオには樫尾4兄弟がおり,シャープには佐々木正がいた。 ○ のちに佐々木は,この判断ミスを「痛恨の失敗」として語るようになる。チャンスの女神に後ろ髪はない。目の前を通り過ぎたら,二度と捕まえることはできないのである。 ○ 佐々木の役回りは,20代前半の才気あふれる若者に「信用」を与えることだった。 ○ 吉田は歯噛みしたが,佐々木はすでにシャープにいない。巨大企業になったシャープにおいて,一介の技術者の声が経営陣に届くことはなかった。 ○ 佐々木がそう言うと,「ひょっとしたら,不可能ではないかもしれない」と思えてくる。佐々木にはジョブズと同じように,周りの人間に自分のビジョンを信じ込ませ,「現実歪曲空間」を作る力がある。 ○ 「そうか。この苦境の中で,君たちは,こんな素晴らしいものを作っていたのか。こいつは困ったな。次のオリンピックまで生きる理由ができてしまった」
  目次 プロローグ 孫正義の「大恩人」、スティーブ・ジョブズの「師」 第一章 台湾というコスモポリス 第二章 「殺人電波」を開発せよ 第三章 アメリカで学んだ「共創」 第四章 早川電機への転身 第五章 「ロケット・ササキ」の誕生 第六章 電卓戦争と電子立国への道 第七章 未来を創った男 エピローグ 独占に一利なし
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