『海は見えるか』(真山仁・著)
雲の多い日でしたが,雨が降ってくるような天気ではありませんでした。
夏の陽射しはありませんでしたので,暑さはそれほど感じませんでした。
今日の夕食に,初物の南瓜(かぼちゃ)がありました。ほくほくして美味しく,“季節”を味わいました。
今日,物置の整理をしました。
仕舞ってあった“新品”や,次に使おうと置いてあった“物”を,一先ず外に出し,
「これは,何をするもの?」
「これ,まだ使う?」
と一つ一つ確かめながら片付けました。
物置のなかが,広くなった気がします。
テレビや映画にもなった『ハゲタカ』の作家名を見つけて,『海は見えるか』(幻冬舎・刊)を手にしました。
帯に『普通の生活がしたいんです。』の大きな文字,「東日本大震災から一年以上…」や「生き抜く 勇気に出会う 珠玉の連作短編!」とありました。
前作 があるようですので,それを読んでからの方がよいかもしれませんが,本書を読むのに困ることはありませんでした。
主人公は,小野寺徹平。東日本大震災後,神戸から被災地の小学校へ応援教師として派遣された教師です。
舞台の遠間市立第一小学校(前作とおなじだそうです)で,“派遣の延長”をした小野寺先生が,子供,教師,地域の人とともに苦悩し,さまざまな困難に立ち向かっていくようすが描かれます。
小野寺先生は,阪神・淡路大震災で妻と娘を失っています。
震災後に子供達を襲う“問題”,PTSD(心的外傷後ストレス障害),移住,転校,そして地域の“問題”,医療支援の一環として行われるDNA検査,復興計画…
“問題”に襲われる小野寺先生と周囲の人々…
・故郷と親友との絆を大切にする──。こんな当たり前の気持ちすら,大震災は引き裂こうとする。その問題の真っ只中で途方に暮れる大樹を,小野寺は応援したかった。 ・柏原の問いは,重たかった。 「正直,迷っています。被災地の子どもたちは皆,精一杯無理して明るく振舞っています。でも,それもそそろ限界です。そんな中,津波で兄を亡くした喪失感を埋めるように慕っていた宮坂さんの自殺を伝えるべきかどうか」 ・「少し意味が違うんだな。本当に強い人は弱音を吐くんです。それができるようになって初めて,弱音を吐いてはいけない時が分かるんですよ。それがわかるまではしっかり弱音を吐くんです」 ・小野寺は言葉を失った,栗田の父親に対して,子どもに夢を押しつける親というレッテルを簡単に貼ってしまった己が情けなかった。 ・ところが,急に津波の速度が落ちた。(略) 自然の力が人を襲い,自然の力が人を守る。どっちにしたって自然には敵わんのか──。 ・「小野寺ちゃんは正義の味方マンだからなぁ。社会の常識とか倫理とかが大事っていうのも分かるけどさ,それより何より俺たちが望んでいるのは,普通の生活なんだよ。 体調が崩れたら医者に診てもらう。(略) すぐに診てくれる医者が,この街に欲しいんだよな」小野寺先生と問題に立ち向かっていくような気持ちで読んでいく一冊です。 若い教員のみなさんには,小野寺先生が「子供をとらえる」「子供に寄り添う」姿から,子供との係り方を見直すことができると思います。 また,ベテランの教員のみなさんには,浜登さんの言葉に「ドキッ」とするかもしれません。 今,あらためて“震災後”を考えました。 前作も読んでみたいと思いました。 あなたもいかがですか。
目次 それでも、夜は明ける 便りがないのは… 雨降って地固まる 白球を追って 海は見えるか 砂の海 戻る場所はありや【関連】 そして、星の輝く夜がくる (講談社文庫) 【今日の小咄】 国語の先生は,黒板の字を間違えると,いつも「みんなが集中しているかどうか,試してみたんだ。」と言い訳をした。