『保健室から見える親が知らない子どもたち』(桑原朱美・著)
暖かい天気の良い一日でした。
学校の保健室に,どんな思い出,イメージをお持ちですか。
“保健室の先生”は,どんな先生でしたか。
新型コロナ禍で,日本での感染拡大は,世界から見ると小さな変化です。これは,日本の生活習慣によるものと言われますが,それを支えるのは学校教育です。その“基地”が保健室であり,“リーダー”が保健室の先生(養護教諭)です。
2020年,世界にパンデミックを引き起こした「新型コロナウイルス感染症」で,日本の生活習慣の高さが評価されたのは,まさに,日本の健康教育のたまものであり,長年,それに携わってきた養護教諭の努力によるものだと確信しています。保健室は,体調不良やケガという誰にでもありうる理由で,来室することができるという敷居の低さがある場所です。 そこでの出来事や会話,その気づきから,子供の姿を語る『保健室から見える親が知らない子どもたち』(青春出版社・刊)です。 元養護教諭の著者が,子供との会話や場面から“親の知らない子供”の「姿」と「心」を浮かび上がらせます。 そして,その子供への接し方,かかわり方を述べています。 第1章で,「保健室のようす」からイメージを膨らませます。 第2章で,事例からさまざまな子供の姿を挙げています。この章から,事例ごとに,具体的な場面そして対応,最後に「まとめ」の形式で綴られます。 第1章を読んだ後は,順に読んでゆくのも良いですし,気になる事例を選んで先に読むのも良いでしょう。 ただし,子供との対応を読みながら,「こんなに上手くはいかない」「簡単に子供は話してくれない」と思わる方がみえるでしょう。また,事例の対応を“そのまま”行って上手くいかないと嘆くかもしれません。 具体的に書かれていますが,“マニュアル”や“手引き”ではありません。
○ 目の前の子供の「どこ」「何」に注目するのか ○ そのことに,「どのように」対応するのか ○ 対応するとき「意識」することは ○ 意識したことが「自然」できるようになるには …それを読み取り,子供と接してみると,「あれっ。何か違う」と変化が生まれたり,「そうだったんだ」と気づくことが表れてきます。 題名にあるように,本書で“親が知らない子ども”が我が子であることを,保護者の皆さんに気づいていただきたいと思います。 そして,ぜひ教職員のみなさんに読んでいただきたい一冊です。 気になる行動を見かけて「なんでなんで攻撃」をしている先生がたくさんいます。 “体感覚”の強い子に,言葉でのコミュニケーションを続けている先生がいます。 そうした自分の姿に,“肯定する理由”をつけて,先生は変えようとしていません。 お父さん,お母さん,そして先生,お薦めです。 読書メモ
○ 保健室は,癒しの場ではありません。教育の場です。ですので,瞬間的な「いい人」をやっているだけでは子どもたちの生きる力を高めることはできなと考えています。 ○「じゃ,タイムマシンにのりますよ。深呼吸して,ゆっくり目を閉じると体がリラックスしてきます」と,声をかけました。 ○ ピンチをチャンスにすることばを使おう (略) 脳が,未来と解決策にフォーカスして,その答えを探してくれるようになる。 ○ 大人ができることは,「出来事は変えることができないけれど,解釈は変えることができる」ということを(いろいろな考え方のバリエーションも含めて)子どもたちに教えてあげることです。 ○ こういう言い方を「不幸文法」と呼んでいます。 ○ 受け容れるとは,優しくしてあげることではない ○ 保護者向けの講座では,子どもの話を「事実・感情・感情の理由・反応・行動・選択」の6つに分けて聴いてあげてくださいと,お伝えしています。
目次 はじめに 第1章 保健室には、親が知らない子どもがいる 〜教育現場における保健室の存在意義 第2章 子どもたちのつぶやきの背後にあるものは? 〜保健室事例にみる、さまざまな思考パターン 第3章 生きづらさを抱える子どもたちの共通点 〜他人軸から生まれる、ことばと行動について 第4章 子どもの生きづらさを増幅する大人の勘違い 〜悩み解決のために知っておいてほしいこと 第5章 主体的な生き方のための大人の役割 〜脳のしくみを知れば、接し方ががらりと変わる 最終章 他人軸人生から主体的人生へシフトする! 〜どんな自分も受け容れられたとき、世界は変わる おわりに【関連】 ◇姫先生のおめめ(著者のブログ) ◇桑原 朱美 規歌(Facebook) ◇保健室コーチング★桑原☆姫先生さん (@Norikahime)(Twitter) ◇株式会社ハートマッスルトレーニングジム 【これまでの読書から】 ◇『大学生のストレスマネジメント』(齋藤憲司 他・著)(2021/02/13 集団「Emication」) ◇『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(島村華子・著)(2021/01/14 集団「Emication」) ◇『かかわりの糸を結ぶ21の言葉』(曽山和彦・著)(2020/12/04 集団「Emication」)