集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『同調圧力』(望月衣塑子・前川喜平・マーティン・ファクラー・著)

蝋梅0219。 天気のよい日で,気温の低い朝でしたが,日中は少し暖かくなりました。  夜,大学生の行う“教育談義”が予定されています。前に提供した“もの”を話題にするそうです。  どのような内容になるか,とても楽しみです。よろしくお願いします。  以前に話題になった言葉ですが,新型コロナ禍のなかで「同調圧力」を耳にすることが増えた気がします。
 同調圧力とは,少数意見を持つ人が多数意見に合わせるよう暗黙のうちに強制するものです。  地域共同体や職場などある特定のピアグループにおいて,意思決定,合意形成を行う際に,少数意見を有する者に対して,暗黙のうちに多数意見に合わせるように誘導することを指す。
 新型コロナウイルスの感染拡大で「自粛警察」と呼ばれた相互監視が行われ,「戦時中の隣組のようで…」と懸念する声もありましたが,第2波,第3波でも聞かれ(見られ)ました。  こうした動きが「同調圧力」を顕在化させたと感じています。  その背景を考えられるかと『同調圧力』(角川新書)を読みました。  前政権の事件や問題に関わり扱った3名の著者が,それぞれの体験や考えを語り,対談をしています。  第一章から第三章で,東京新聞記者の望月衣塑子氏,元文部科学省事務次官前川喜平氏,元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏が,体験した“同調圧力”について具体的な場面から述べています。報道やネット記事,ツイートなどで読んだ気がしますが,より詳しく分かったり,新しく知ったりする“当事者の見方”でした。
 後藤田氏(後藤田正晴官房長官)は,追究が厳しくても勉強している記者を評価し,ご用聞き的な記者を相手にしなかった。
 最近の問題について,以前の“度量と奮闘”を示されると,情けなさを感じます。  集団や組織から求められる“同調圧力”を問題として語る3氏ですが,それぞれの「組織仕組み)」で活動を続けていました。
記者クラブ制度の恩恵を受けてきた。首から下げる国会記者章と国会バッジがあれば,ほとんどの行政官庁の会見には事前チェックなしに入れるし,最新の発表を聞き,記事にできる。 ○ 役人は役所という組織のなかでポストを得ないことには,やりたい仕事もできない。希望してきた仕事をするためには,それができるポストに就かなければ何も始まらない。
 「個人の思い」と「組織からの恩恵」を,どのように思い,行動に表すかは,それぞれが考える“組織論”によるのだと思います。  その差異が,本書を読み進めるなかで,自分に問いかけてくる気がしました。
 若者も大人も,みんながそれぞれ所属している職場などの場所があり,集団のなかでとりあえずはこうしなくてはいけない,何かに合わせないといけない,といったことはたくさんあると思う。それでも一方では,自分のなかでこれだけは大切にしていきたい,これだけは伝えていきたい,あるいは自らが声を出すことで変えていきたい,と思えるものが必ずあるはずなんですよね。
 新型コロナウイルス感染者数は減少していますが,新型コロナ禍での日々は続きます。  これからも,“同調圧力”を強く感じることがあるでしょう。“そのとき”どのように行動するのか,「そのとき」のことを本書から考えてみませんか。  読書メモ
○ ネットを使えば無料でニュースが読める時代,読者が新聞社に求めていることは何なのかよく考えてみたい。 ○ 世間から見れば得意に映る習慣であっても,その組織のなかでは当たり前であることが少なくない。 ○ 小学校6年生を対象とした道徳教科書に「星野君の二塁打」という,少年野球をテーマとした教材が収録されている。(略) 問題はそのような授業をこのような教科書を使って行うことができるのか,ということだ。 ○ 予定通りに作戦が進んでいるといった,アメリカ軍の成果ばかりが伝わってくる状況に,実際の戦況は違うのではないかと声を上げたのが若きジャーナリストたちだった。 ○ 新聞記者は20世紀の時代から,何よりも客観性を求められてきた。ゆえに主観的な視点に立って「私は──」と各記事はタブー視されてきた。(略) しかし,インターネットが日常生活のなかへ深く浸透してくるとともに,情報源が多様になればなるほど記事を書く記者の存在がよくも悪くも注目されるようになった。 ○ 力が新聞から読者に移った状況下で (略) 情報の受け手,新聞なら読者のクオリティが高くなってきたわけですね。
   目次 第一章 記者の同調圧力 …望月衣塑子  1 質問を妨げられる記者会見  2 記者と同調圧力  3 同調圧力に屈しない人々 第二章 組織と教育現場の同調圧力 …前川喜平  1 何もしないという同調圧力  2 道徳教育が生み出す同調圧力  3 真に自由な人間に同調圧力は無力だ 第三章 メディアの同調圧力 マーティン・ファクラー  1 アメリカの報道はスクープ報道から調査報道へ  2 日本メディアに危機感がない理由  3 信頼できるメディアが道しるべに  巻末付録 座談会 同調圧力から抜け出すには あとがき …望月衣塑子
【関連】   ◇望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI)Twitter)   ◇前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民) (@brahmslover)Twitter)   ◇Martin Fackler (@martfack)Twitter) 【おまけ】   ◇『星野君の二塁打』(Ronshi)