集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『お酒の経済学』(都留康・著)

亀0928。 晴れて空の綺麗な日で一週間が始まりました。  今日は,オンラインシンポジウム「ウィズ・コロナ時代の"街・人・世界”を読み解く」で楽しく考えます。  新聞のコラムに,
 新型コロナウイルス禍が拡大し始めた春先、「」を「」と誤読し、失笑を買った人がいた。笑い話で済めばいいが、災禍は続き、鍋を囲む芋煮会シーズンにも暗い影を落としている。
とありました。河畔など屋外で行われる芋煮会であっても,「いつものように…」とはいかないでしょう。  “郷土の味”を伝える鍋料理も,新型コロナ禍でいつものようにはいきません。鍋奉行は,どんな采配をするでしょうか。  郷土の味を楽しむ,郷土の味を伝える,郷土の文化を継承する…  “大切なこと”を失わないためには…   “お酒を嗜む”みなさん,酒税法の改正が10月1日に行われるのをご存知ですか。  週末に“買いだめ”したり,今月は“買い控え”をしている方もみえることと思います。  改正について詳しくは,特設サイト「酒税法改正 なにがどうなる?」(Yahoo! JAPAN)などをご覧ください。  酒税法改正を前に,経済学から酒(日本酒,ビール,ウイスキー,焼酎)を語る『お酒の経済学-日本酒のグローバル化からサワーの躍進まで』(中公新書を読みました。  第1章で「酒類消費の減少というと,必ず聞くのは「若者の酒離れ」である。」と,若者の変化を取り上げています。  「若者の○○離れ」は,酒類だけでなく,いろいろな物や場面で使われるような気がします。この論法は,安直なのかもしれません。
 それはそうかもしれない。だが,そこで避けられているのは,はたしてお酒なのだろうか。それとも上下関係(権力)なのだろうか。今風にいえば,酒離れのエビデンスは本当にあるのだろうか。
 この問いかけ(疑問)に,その答えは…。  本書のねらいについて著者は
 第1に、日本酒だけでなく、ビール、ウイスキー、焼酎、サワーの歴史と現状の全体像を描くことです。この1冊で全体を俯瞰することができます。  2つ目は、これまであまり論じられてこなかった各酒類メーカーや蔵元の戦略やイノベーションの実態を、経済学と経営学の視点を踏まえて明らかにすることです。類書はほぼないでしょう。  3つ目は、具体的事例をふんだんに盛り込み、文章の読みやすさに注力したことです。徹底してわかりやすさを追求しました。
とインタビューで述べています。  この通りだと思いますが,興味をもって読んだのは,“酒類メーカーや蔵元の戦略やイノベーションの実態”です。経済学の視点から語られるイノベーションは,新型コロナ禍の社会を過ごすヒントが得られるように思います。  お酒の好きな方もそうでない方も,経済学の視点に“これからを考える”一冊です。いかがですか。  読書メモより。
○ 尾畑酒造は(略)「学校蔵」を運営している。ここでは夏場に酒造りをしており,「酒造り」「学び」「環境」「交流」の4つの柱で運営している。 ○ 近代的工場に似つかわしいのは(略) 冬場に寝食を共にする過酷な蔵人の労働は,通勤によるサラリーマンの仕事へと変化した。 ○ そうすると,顧客が選んでいるのは,生酛造りや自家栽培米というメッセージである。消費者は,造り手が発したメッセージに意味を見いだしていることになる。 ○ 日本企業が底辺への競争に追い込まれている間に,世界との差は大きく開いたのである。 ○ ウイスキーの「貯蔵」という工程が,投資から製品の販売までの期間を長くする。これは投資の「懐妊期間」が長いといえる。 ○ その際にとったマーケティングの手法は(略) を起用し,デザイン重視の姿勢をとった。勤め帰りの人が駅でふっと足を止める光景が目に浮かぶようである。 ○ けれども,これは需給不均衡の結果であり,同程度のこだわり製法の焼酎と本質的な酒質の差はない。 ○ RTDは何かの代替財でも保管財でもないと筆者は考える。 ○ この傾向は,RTDのチューハイの場合はさらに強いと思われる。最近のヒット商品である(略) 売れ筋のRTDの多くはビールメーカーかAの製品だからである。 ○ グローバル化はよく使われる言葉だが,明確な定義が必要である。内閣府『経済財政白書』(2004年)の定義では,「グローバル化とは,資本や労働力の国境を越えた移動が活発化するとともに,貿易を通じた商品・サービスの取引や,海外への投資が増大することによって世界における経済的な結びつきが深まること」を意味する。
   目次 まえがき 第1章 日本のお酒の現在 第2章 日本酒──伝統と革新 第3章 ビール──「新ジャンル」と「クラフト」との狭間で 第4章 ウイスキー──国内外人気の光と影 第5章 焼酎──三度のブームと停滞する現状 第6章 グローバル化──現状と課題 終章 日本のお酒はこれからどうなるか あとがき 参考文献
【関連】   ◇酒税関係法令等の改正国税庁)   ◇酒税法改正 なにがどうなる?Yahoo! JAPAN)   ◇日本酒造組合中央会   ◇ビール酒造組合   ◇日本洋酒酒造組合   ◇焼酎SQUARE(焼酎スクエア)日本蒸留酒酒造組合)   ◇日本地酒協同組合   ◇全国地ビール醸造者協議会   ◇日本地ビール協会 クラフトビア アソシエーション