集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『バケモンの涙』(歌川たいじ・著)

花0731。 朝,まだ霧で真っ白でした。出かける時,傘を持って出ました。  ワイパーを動かすほどではありませんが,雨粒がフロントガラスに当たりました。  用事を済ませて出ると,青空が目立つ空になっていました。午後,気温33度,青空になりました。夏の“空気になりました。  帰り道,途中で“空気”が変わりました。気温が5度下がっていました。  高原の“よさ”を愉しめる気候になってきたようです。  「いい話の図書館」で届いた18冊目の図書『バケモンの涙』(光文社・刊)です。  本に恋する小林店長は,ブックカバーに
 この本は,第二次世界大戦中から戦後にかけての実話をもとにした物語です。縁あって原稿を読ませていただきました。  大阪のいとはんとよばれて育った女性が飢えて亡くなってゆく子供たちを目の前に,まさに命がけで闘ったこと,戦争の悲惨さ,命の重さを目をそむけないで伝えなければ“平和”に生きるわたしたちの意味はないと感じました。
とメッセージを載せています。  表紙に後ろ姿で立つモンペ姿の女性が「大阪のいとはん」でしょうか。その目は,どこを見ているのでしょう。  帯に,
 勇気がわく,感動の実話  彼女の本気が,奇蹟を起こした。  太平洋戦争の最中,子どもたちを飢餓から救うため。ポン菓子製造機に人生を懸けた19歳。  あらゆる困難に立ち向かう。  みんな,行きたい。
とありす。「ポン菓子製造機」は,お世話になったし,知っています。数年前,子供達に楽しんでもらいました。  その“機械”が生まれたのは1900年ごろと言われており,国産機を開発したのは北九州市戸畑区の吉村利子氏です。  題名の「バケモン」は,その機械からきているようです。  主人公は,大阪のいとはん 橘トシ子 です。  彼女が育った大阪の旧家,そして訓導として勤めた学校,そして衝動にかられて移った北九州での奮闘が描かれます。  彼女の目に映る“戦争の姿”は,読みながら心が苦しくなりますが,しっかり受け止めたいと思いました。
○ 火だるまの背には赤ん坊がいました。母親にしがみついたまま焼かれていたのです。もう後ろ側は真っ黒焦げでした。顔は焼けただれて,もう顔ではなくなっています。 ○ 橘にいた頃の私は,若ごりょんさんらしいせぇ言われて,自分が自分でのうなるんが,ほんまにいややった。私は私や思てた。(略) 女らしい,妻らしい,母親らしい。すべての枠が私はいややった。 ○ 職工は何年もかかって職工になっていくんよ。そうやのに伝統工芸みたいな職人と違って,誰も尊敬しよらん,誰も守ってくれん,上に怒鳴られながら鉄を作って,なじられながら鉄を削っり続けるんちゃ。(略) 明日死ぬかもわからん,命を削りよるんよ。それでも誰も偉いとは思わん。 ○ 大阪の子どもらは,雑穀を生で食べてます。炊く燃料がないからです。生やから,消化できません。栄養失調でほっぺたも腕もおしりもガリガリで(略) みなさんは,子どもが飢えて死んでいくのを見たことがありますか。 こばやし○ ウチだけ助けてもらったらええち話と違うけのぅ。働けんごとになった職工の面倒は,誰が見るんよ。うちの人はもう死んでしまったけ,生きてる人のことを考えんと。そうやろ。兵隊さんは戦場で怪我したら(略) ウチは,そういうんを変えてほしいんよ。 ○ 治める者は治められる者のため,治められる者は治める者のため,そげな気持ちがあって成り立つとばい。それがなかったら国の意味はなか。我がだけ儲けりゃよか,欲ばっかりのつまらん者がおるけん,貧乏人が生まれると。天皇陛下がどげん国民ば思っても,つまらん者が力を握るったい。そげな世の中やけん,戦争が起こると。人の暮らしやら命ば,戦争して金に換えて懐にいれるごたぁもんたい。
 大阪の旧家のいとは 橘トシ子が,子供達を飢えから救いたいと,北九州に女ひとり乗り込み工場を立ち上げ奮闘する姿に,感動します。  彼女の生きる時代は「戦中」です。  ここに描かれる子供の姿,その暮らし,そして空襲のある生活…は,“そこにいる”ように感じました。  戦後75年,「戦争を知らない子どもたち」が,その時代に思いを寄せ,自分ごとと“想像”していただけると思います。  トシ子さんの生き方から,未来(あす)の“元気”が見つかります。 【関連】   ◇歌川たいじ -バケモンの涙- (@taiji_utagawa)Twitter)   ◇Utagawa Taiji 歌川たいじ商店
歌川たいじ「バケモンの涙」
 ブックカバーの内側(?)は,「本に恋する店主の呟き新聞」があり,店主のコラムと「本を愛しすぎた店長小林由美子が選ぶ “おすすめ○○”」が載っています。  今回の第17号は次の本が紹介されています。
生きることに勇気の出る短い物語 3冊】   ◇『絆を紡ぐ :人情時代小説傑作選』(池波正太郎藤沢周平 他/新潮文庫)   ◇『さいはての彼女』(原田マハ・作/角川文庫)   ◇『いろいろあった人へ 大人の流儀』(伊集院静・著/講談社・刊)
 こちらもお薦めです。 【「いい話の図書館」】  ◇最近紹介した本   ◇『人生を変える幸せの腰痛学校』(伊藤かよこ・著)(2020/06/27)   ◇『夜廻り猫』(深谷かほる・著)(2020/06/01)   ◇『101人の、泣いて、笑って、たった一言物語。』(志賀内泰弘・著)(2020/05/30)※5月に受領   ◇『書斎の鍵』(喜多川泰・著)(2020/04/23)   ◇『12の贈り物』(シャーリー・コスタンゾ・作)(2020/04/03)  *以前に紹介した本は   ☆カテゴリー「いい話の図書館」から 「いい話の図書館」とは… 本との出逢いは,人生を変えます。辛い時,悲しい時,苦しい時,一冊の本が「生きる希望」を授けてくれます。  そこで,ステキな本との出会いを提供する「いい話の図書館」を全国津々浦々に作ったら,どんなに素晴らしいだろうと考えて館主を募集しております。「いい話の図書館」の館主のお仕事は,本棚にステキな本を並べて多くの人に自由に読んでいただくこと。そのステキな本は,テレビをはじめ,マスコミでも話題の小林書店のカリスマ店主,小林由美子さんが心を込めて推薦する本です。   ◇いい話の図書館【申込】   ◇小林書店さん (@cobasho.ai)Instagram写真と動画)   ◇志賀内 泰弘Facebook