集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『ぼくの命は言葉とともにある』(福島智・著)

花0331。 3月末日となり,平成31年・令和元年度の最終日を迎えました。雨模様の曇りの日でした。気温が上がらず,久しぶりに日中にストーブを点けました。  夕方のニュースが,東京都で新たに78人の新型コロナウイルスの感染が確認され,感染者が500人を超えたようです。  新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の検討が始まりそうな状況です。  明日から新年度です。今日をピークとして,新しいスタートを明るく迎えたいですね。  「いい話の図書館」で届いた13冊目の図書です。  3歳で右目を,9歳で左目を失明,そして14歳で右耳を,18歳で左耳を失聴し,光と音の世界を喪失した福島氏の『ぼくの命は言葉とともにある (9歳で失明、18歳で聴力も失ったぼくが東大教授となり、考えてきたこと)』(致知出版社・刊)です。  「光と音のない世界」,想像はできますが,実感を持てるわけでなく,そのなかで生きていくことは,容易なことではないと思います。  本に恋する小林店長は,ブックカバーに
 9才で失明し,18才で聴力も失った少年が,苦悩の中に生きる意味を信じ模索し続けて東大教授となった今,その生きる力と勇気の多くを読書から得たと言い切ります。  思慮深くわかりやすいこの1冊は,迷ったとき,私の最も大切な道しるべとなりました。  後半に,東大の入学式で述べられた祝辞が全文載っています。人生の大切なスタートで,こんな言葉を贈られた若者たちは,何と幸せか塗子がふるえます。
とメッセージを載せています。  本書のなかに“コミュニケーション”という言葉が何度も出てきます。  多くの人が「コミュニケーションが大切で…。」とか「人とのコミュニケーションをしっかりとって…。」と言い,それに抗う人は少ないと思います。その多くの人が発するのは,言葉であり行動(身体表現)です。それを相手が受け止められることを当然としています。  でも,著者は,言葉(音)も行動(光)も受けられません。  その状況での“コミュニケーション”は…。
○ その真空に浮かんだ私をつなぎ止め,確かに存在していると実感させてくれるのが他者の存在であり,他者とのコミュニケーションです。(略) ○○によって初めて,自分の存在を実感することができる。他者とのかかわりが自分の存在を確かめる唯一の方法だ,ということです。 ○ 何人もの人が激しく動き回る気配が,地面から振動となって伝わってきます。(略) グランドから伝わる,ドタドタという振動。午後の陽射し。土の香り。椅子の感触。それだけです。私は急速に,一つの感覚に捉えられていきました。  私はこの「世界」にいるのだけれど,本当は存在していない。
 点字指点字で“言葉”は伝わってきても,それがコミュニケーションとは思えずにいた著者に,転機が訪れます。
 私の手に触れていたMさんが指点字を打ちます。 「M:I君はいつおうちに帰るの? I:うーとね,二十二日に帰ろうと思うんだけどね」  その瞬間,私の内部で何かが激しくスパークしました。この短いやり取りの中で,二つの新しいことが起こったからです。  第一に(略) 第二は(略)
 彼に起こったスパークが分かりますか。  読むのを止めて考えましたが,思い浮かびませんでした。もちろんスパークは起きません。  著者が語る“コミュニケーション”が,改めて普段使っている言葉や意味を問い返してきます。  また,生きること(生存)について,次のように問いかけてきます。
 では,「文化的な意味での生存」を支えるものはなんでしょうか。
 今を生きることの文化的な意味を考えたことがありますか。  著者の見出した生きる意味,幸福の形は,あなたに“深く考える”ことを迫ってくるでしょう。  今を生きること,これからを生きることを,考え,強く思う一冊です。
目次 ◎プロローグ 「盲ろう」の世界を生きるということ ◎第一章 静かなる戦場で ◎第二章 人間は自分たちが思っているほど強い存在ではない ◎第三章 今この一瞬も戦闘状態,私の人生を支える命ある言葉 ◎第四章 生きる力と勇気の多くを,読書が与えてくれた ◎第五章 再生を支えてくれた家族と友と,永遠なるものと ◎第六章 盲ろう者の視点で考える幸福の姿 あとがき
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