集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『ひと』(小野寺史宜・著)

花0306。 朝から青空の綺麗な一日でした。  当地は,気温が低いままだったので暖かくはなりませんでしたが,陽だまりはポカポカした感じでした。  最近届く“開催案内”には,これまでにない記述があります。
 新型コロナウイルス(COVID-19)による感染拡大防止に向けて,下記のとおり案内いたします… ご協力をお願い申し上げます。 (略)  当日までの健康状態にもご留意いただき,くれぐれも無理をなされませぬようお願いいたします。
と,今日届いた通知にもありました。  この記述が不要になる日が早くくることを願います。  「いい話の図書館」で届いた11冊目の図書です。(12冊目は先日紹介。)  今回の本は,2019年本屋大賞第2位となった『ひと』(祥伝社・刊)です。  突然の父親の死,そして母親の死,たった一人になった僕は…。  ブックカバーにある小林店長からのメッセージでは,
 人生は,思い通りにいかないこと,いっぱいあるけど,「あきらめない」でいいこと,きっとあるよね!!    こばやしゆみこ  若いってすごいなと思います。  思い通りにいかないことや自分で選んでいないのに,運命に翻弄されることってあるのです。  でも,その時その時に,迷いながら悩みながら,右か左か選んで決めて歩きだすのです。  この作家は,いつも登場人物の立ち位置を読者にわかるように書かれている,街並みから街の匂いまで感じられて,ほっとします。  「あきらめない」で,歩いていこうと思います。
と載せていました。  主人公 柏木聖輔,住まいに近い商店街で,たまたま訪れた惣菜店「おかずの田野倉」でメンチを買い,食べながら…
 ご縁を残す,という先の言葉が頭に浮かぶ。ご縁。そんなものは本当にあるのか。  メンチは残り三分の一。あれこれ考えずに言う。 「あの」 「ん?」 「働かせてください」
 ここから“”の始まりです。聖輔が,新たな人生に踏み出していきます。  主人公(聖輔)の日々に,若いあなたはこれからを重ね,歳のあなたはこれまでを振り返り,彼の出会いと出来事をたどってみませんか。  聖輔が出会う“”が特別なのか…,恵まれているのか…。  いや,あなたの前にも…。 【関連】   ◇ひと特設ページ祥伝社)   ◇本屋大賞「いい話の図書館」 これまでに紹介した本】   ◇『尼崎ストロベリー』(成海隼人・著)(2020/01/24)   ◇『365日の親孝行』(志賀内泰弘・著)(2019/11/27)※11月に受領   ◇『よっぽどの縁ですね』(大谷徹奘・著)(2019/11/25)   ◇『「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」』(高橋しん・著)(2019/11/06)   ◇『京都祇園もも吉庵のあまから帖』(志賀内泰弘・著)(2019/10/23)※10月に同封   ◇『雪とパイナップル』(鎌田實・著)(2019/10/06)   ◇『負けるな、届け!』(こかじさら・著)(2019/08/31)   ◇『気象予報士のテラさんと、ぶち猫のテル』(志賀内泰弘・著)(2019/08/18)   ◇『本のエンドロール』(安藤祐介・著)(2019/08/10)   ◇『Life(ライフ)』(くすのきしげのり・作/松本春野・絵)(2019/06/30)   ◇『勇者たちへの伝言』(増山実・著)(2019/05/29)   ◇『スタートライン』(喜多川泰・著)(2019/05/22)   ◇『眠る前5分で読める 心がスーッと軽くなるいい話』(志賀内泰弘・著)(2019/04/10) 「いい話の図書館」とは… 本との出逢いは,人生を変えます。辛い時,悲しい時,一冊の本が「生きる希望」を授けてくれます。  そこで,ステキな本との出会いを提供する「いい話の図書館」を全国津々浦々に作ったら,どんなに素晴らしいだろうと考えて館主を募集しております。「いい話の図書館」の館主のお仕事は,本棚にステキな本を並べて多くの人に自由に読んでいただくこと。そのステキな本は,テレビをはじめ,マスコミでも話題の小林書店のカリスマ店主,小林由美子さんが心を込めて推薦する本です。   ◇いい話の図書館【申込】   ◇小林書店さん (@cobasho.ai)Instagram写真と動画)   ◇志賀内 泰弘Facebook) 【おまけ】  ネットでは早くから紹介されていましたが,テレビでも話題となったイタリアにあるボルタ高校の校長先生 ドメニコ・スキッラーチェ 氏が出したメッセージです。
ヴォルテ高校の皆さんへ  “保険局が恐れていたことが現実になった。ドイツのアラマン人たちがミラノにペストを持ち込んだのだ。感染はイタリア中に拡大している…”  これはマンゾーニの「いいなづけ」の31章冒頭,1630年,ミラノを襲ったペストの流行について書かれた一節です。 この啓発的で素晴らしい文章を,混乱のさなかにある今,ぜひ読んでみることをお勧めします。この本の中には,外国人を危険だと思い込んだり,当局の間の激しい衝突や最初の感染源は誰か,といういわゆる「ゼロ患者」の捜索,専門家の軽視,感染者狩り,根拠のない噂話やばかげた治療,必需品を買いあさり,医療危機を招く様子が描かれています。  ページをめくれば,ルドヴィコ・セッターラ,アレッサンドロ・タディーノ,フェリーチェ・カザーティなど,この高校の周辺で皆さんもよく知る道の名前が多く登場しますが,ここが当時もミラノの検疫の中心地であったことは覚えておきましょう。いずれにせよ,マンゾーニの小説を読んでいるというより,今日の新聞を読んでいるような気にさせられます。  親愛なる生徒の皆さん。私たちの高校は,私たちのリズムと慣習に則って市民の秩序を学ぶ場所です。私は専門家ではないので,この強制的な休校という当局の判断を評価することはできません。ですからこの判断を尊重し,その指示を子細に観察しようと思います。そして皆さんにはこう伝えたい。  冷静さを保ち,集団のパニックに巻き込まれないこと。そして予防策を講じつつ,いつもの生活を続けて下さい。  せっかくの休みですから,散歩したり,良質な本を読んでください。  体調に問題がないなら,家に閉じこもる理由はありません。  スーパーや薬局に駆けつける必要もないのです。マスクは体調が悪い人たちに必要なものです。  世界のあちこちにあっという間に広がっているこの感染の速度は,われわれの時代の必然的な結果です。ウイルスを食い止める壁の不存在は,今も昔も同じ。ただその速度が以前は少し遅かっただけなのです。  この手の危機に打ち勝つ際の最大のリスクについては,マンゾーニやボッカッチョ(ルネッサンス期の詩人)が教えてくれています。それは社会生活や人間関係の荒廃,市民生活における蛮行です。見えない敵に脅かされた時,人はその敵があちこちに潜んでいるかのように感じてしまい,自分と同じような人々も脅威だと,潜在的な敵だと思い込んでしまう,それこそが危険なのです。  16世紀や17世紀の時と比べて,私たちには進歩した現代医学があり,それはさらなる進歩を続けており,信頼性もある。合理的な思考で私たちが持つ貴重な財産である人間性と社会とを守っていきましょう。それができなければ,本当に ‘ペスト’が勝利してしまうかもしれません。  では近いうちに、学校でみなさんを待っています。       ドメニコ・スキラーチェ