『天地に燦たり』(川越宗一・著)
お休みを楽しんでいますか?
お仕事ですか?
図書室の書架にあった『天地に燦たり』(文藝春秋・刊)です。
第25回松本清張賞を受賞した作品で,秀吉の朝鮮出兵が題材となっています。
作家の三浦しをん氏は,
「論語、難しい……」と最初は不安だったのだが,登場人物たちのやりとりにそこはかとなきユーモアがあり,ぐいぐい惹きこまれた。どの人物も実在したのではないかと思うほど魅力的で,本作で描かれる時代にタイムスリップした気分だった。と評しており,帯にも「激しく心揺さぶられた」の言葉がありました。 この作品は,戦を描く主軸に,義でも忠でもなく,儒教の“礼”の概念受容を置いています。それをテーマとして,島津の侍,朝鮮国の非差別民の少年,琉球国の密偵,それぞれの視点から描かれています。 本書を紹介する文章に,
物語は島津の侍大将・大野久高が,「俺は,いつまでこんなことをしているのだろう」と思うところから始まる。この思いは,その後もしばしば出てくるもので,久高が幼い頃に学んだ儒学の影響によるものだ。儒学では人が人たる所以が“礼”であるとされる。人は「天地ト参ナルベシ」(天地と並び立つ崇高な存在)になれるのだろうか,と戦場で戦ってきた久高に“礼”は遥か遠いものでしかなかった。 儒学の“礼”を『礼記』などから引用して,久高,明鐘,真市,道学先生に語らせて儒学問答のようなペタンチックな面はあるが,登場人物たちの生き方の模索と密接に結びついているために邪魔にはならない。 久高,明鐘,真市の三人の“礼”に対する思いはそれぞれに異なるものの,現代の国際情勢を考える上で貴重な考察を与えてくれる。“凄い作品”なのですが,読み切れませんでした。 まだ作品を読める“力量”が備わっていないようです。 みなさん,年末年始の時を,久高(島津),明鐘(朝鮮国),真市(琉球国)と過ごしてみてはいかがですか。
目次 禽獣 異類 をなり神の島 天地と参なるべし 天下と四海 洪明鐘 碧蹄 万物生生 何ぞ死なざる 誠を尽くす 恃険与神 琉球入り 天地に燦たり