『もっとヘンな論文』(サンキュータツオ・著)
“晴れ”ではありましたが,すっきりした天候ではなく,期待した夏の日にはなりませんでした。
夕方,たくさんのツバメが“競っている”ように飛ぶ姿がありました。春の巣作り,巣立ちが盛んだった頃のようなようすです。
今までもこの時期に見られたのかもしれませんが,昨日は気づかず,突然「あれっ」と驚くような“景色”でした。
みなさんのところでも,ツバメが飛んでいますか。
サンキュータツオ氏の著作では,以前に『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』(角川学芸出版・刊)(2013年4月23日の記事)を楽しんで読みました。
先日,書架で『もっとヘンな論文』(角川書店・刊)を見つけ,著者と書名に興味をもって読みました。
この本には前作があり,それで“もっと”がついていました。
論文が紹介されていき,それぞれに“突っ込み”がされ,ケチをつけられます。しかし,そこに“へんな論文”への愛を感じました。
最初の「プロ野球選手と結婚する方法」は卒業論文です。
やっぱりそうだったか。すがすがしいくらいまっすぐな内容だ。とはいえ,「10代や20代の女ですけど,…(略)…」と,横槍を入れようと思えばいくらでも入れられるところに,この論文があらぬ誤解を受ける隙があるのだ。(略) でも,こう考えてほしい。この論文が「プロ野球選手の配偶者属性分析および行動パターン分析」というタイトルだったら,少し印象が違うだろう。(略)…しているからこそ,この論文は親しみがあるのだ。読み進めながら,“現物(論文)”を読みたくなってきます。 最後では,紹介した内容から,研究や論文への“姿勢”に話が及びます。一本目では
みなさんも,興味のあることに対して,データをとるとか,取材するなどして,「なんとなく」ではなく「数字」や「形」にして考えてみると,思いもしなかったことが発見できるかもしれない。と,読者へ“研究の態度”を勧めています。 ただし,一本目では,1行空けて次のように終えています。
ところで,一番気になったのは,確率よりも,結婚相手の容姿なのだが,そこに関しては一切触れられていなかった。容姿は好みの問題,だったのかな?それぞれ“しっかりした研究の論文”ですが,著者と一緒に“突っ込み”をし,笑い,楽しめます。 そして,「○○の追究ができそう」「○○したら面白そう」と研究に取り組みたくなってきます。(?) 前作も読んでみたいと思いました。 みなさんも,いかがですか。 読書メモ
○ こういう,どうしたって直接確認しに行くことができない過去,未来,遠い宇宙について研究している人たちの想像力と探究心には,本当に頭がさがる。だって「考えても無駄じゃん」という周囲の声を聞いていながら,それでも考えずにはいられない好奇心をむき出しにしてくれている。率直にいって,カッコいいという言葉しかないのである。 ○ 大人になり,大学にもう一度いって授業受けたいなとか,研究してみたかったけど就職しちゃって,とかいう人はたくさんいると思う。しかし,私がここで紹介したインディーズの研究者たちのように,研究はどんな人もできるし形にもできる時代なんだということをぜひ知っておいてもらいたい。 いま価値がなくても,必ずそれを必要とする人が100年後くらいには一人くらいいるものだ。 ○ なんでも学問になっちゃうのだ。好きなものをどう学問にしていくか。そんなヒントがこの論文には詰まっている。 ○ 笑ちゃうほどどうでもいいことかもしれないが,この最後の指摘を読んで震撼した。「あるもの」について考える,分析汁,調べる,ということはだれもがする。だが,徹底してそれをやったときに見えてくるものは,「ないもの」なのだ。 ○ 自分が疑問に思ったり,猛烈に惹きこまれた事物について,その仕組みがどうなっているのか,またなぜそうなったのかを考えることに,当初は金銭は発生していなかったはずだ。研究すること自体が目的化してお金になっているのは,ある意味本来の研究の動機ではない。
目次 はじめに 一本目 プロ野球選手と結婚する方法 二本目 「追いかけてくるもの」研究 三本目 徹底調査! 縄文時代の栗サイズ 四本目 かぐや姫のおじいさんは何歳か 番外編1 お色気論文大集合 五本目 大人が本気でカブトムシ観察 六本目 競艇場のユルさについて 七本目 前世の記憶をもつ子ども 番外編2 偉大な街の研究者 八本目 鍼灸はマンガにどれだけ出てくるか 九本目 花札の図像学的考察 十本目その1 「坊ちゃん」と瀬戸内航路 十本目その2 「坊ちゃん」と瀬戸内航路 後日譚 あとがき【参考】 ◇『ヘンな論文』(角川学芸出版・刊) 【関連】 ◇サンキュータツオ9/8-12渋谷らくご(Twitter) ◇サンキュータツオ教授の優雅な生活