『PTAグランパ!』(中澤日菜子・著)
猛烈な台風18号が沖縄から九州へと進んでいますが,今のところ大きな被害は出ていないようです。このまま,恵みの雨だけを残して過ぎていってくれることを願っています。
当地では“晴れ”とまではいきませんでしたが,最近の不安定な天気とは違って,気温も上がり,日差しがあり,気持ちの良い風が吹く,秋の一日でした。
相変わらず教育や学校に係る“課題”がたくさんあり,その“解決”に向け関係のみなさんが奮闘されています。
そうしたなかの一つに「PTAのあり方」があります。
PTAについて,母親向けサイトで,次のように説明していました。
PTAとは、「Parents and Teacher Association」の略称であり直訳すると「保護者と教師の団体」となり、児童や生徒の両親(保護者)と教師が協力し合って、さまざまな活動を通して青少年の健全育成をはかる組織のことです。 学校は勉強をする教育の場としてだけではなく、学校行事や地域行事などもおこなうことで、児童や生徒の学校生活を充実させます。 しかし、その学校行事や地域行事は先生だけでおこなうのが難しいことであり、このようなときにPTAのサポートが必要となってくるのです。PTAがなければ実施できない学校行事もあるし、PTAが行政に束縛されない組織だからこそできることもあり、子供の豊な成長にとってPTAはなくてはならない存在なのです。説明にもあるように,さまざまな学校の活動で,保護者そして地域の方に参加,協力をいただくことで実施できるものがあります。 それを支えていただけるのが,PTAの組織です。 そうしたPTAのイメージと似合わない“グランパ(祖父)”がタイトルとなった『PTAグランパ!』(角川書店・刊)が気になって読みました。 退職後,ゆっくり過ごす勤,サークル活動に忙しい幸子,その二人の元に,娘の都が子(孫)の友理奈を連れて戻ってきます。 その孫の世話で四苦八苦しているところに,PTA副会長の役が…。
大手家電メーカーを定年退職した、いわゆる元「モーレツ社員」の武曾勤。悠々自適の隠居生活……のはずが、商社勤めの娘が、小学一年生になる孫娘と共に出戻った。 さらに、勤は娘の代理で青葉小学校PTAの副会長を務めることに。 会長は24歳金髪のギャル男、もう一人の副会長は気弱な主婦。勤は「PTAなぞ暇な主婦のお仕事ごっこ」という認識で、敵を作らぬわけがない。早速、会計監査でママ集団のボス・雅恵に目をつけられる。形だけの総会、子連れの居酒屋打ち上げ、運動会に夏祭り……勤には到底理解できない出来事と、トラブル満載のイベントが続く中、信頼していた教師がある事件で起訴されてしまい……。 期待の新鋭が描く、優しい気持ちになれるPTAエンタメ!話は,元「モーレツ社員」の勤と気弱な主婦で副会長の順子の“語り”で進みます。 読んでいくと,「このままだと,次は…」と予想ができましたが,最後は「痛快」「ホロリ」「よかった」という感じでした。 「PTAあるある」という話も多かったですが,会長の織部さんや前会長の吉村さんの言動は「えっ」「今ではあるのかな」ということも。 今,PTAの役員をされている方,子育て中の方々(役員候補の対象者),そして退職後の日々を過ごしている方にお薦めです。 お楽しみください。 読書メモから。
「馬鹿を言え。おれに子育てができるか。そもそも母さんや都が安心してくらしていけたのは,おれの働きがあったからじゃないか」口角泡を飛ばして反論すると(略) 「わたしたちに教員の資格はありませんけど,その代わり,長年培ってきた経験があります。それを若い先生に伝え成長してもらうことで,五年後,十年度の子どもたちに,(略) 」 だが結真はいともあっさり, 「他人にどう見えようと関係ないです。おれはおれ。やりたいようにやる。それだけっすよ」(略) 「ここでじぶんが折れてしまったら,あとにつづく女性社員もきっと働き辛くなる。じぶんががんばっているすがたを会社が認めてくれれば,いつかこんな馬鹿げた嫌がらせもなくなるはずだって,そう考えて仕事をつづけているみたいだよ。」 寛治のことばに,順子は激しいショックを受ける。 「いやなにも特別なことをしているわけじゃないから。じぶんにやれることをやっている,ただそれだけだから」 子どもは騒ぐ。子どもはうるさい。子どもは未完成で──でもそれは当然なのだ。まだこの世に生を享けて十年ほどしか経っていないのだから。 そんな当たり前のことを,おれは忘れていたのかもしれんなぁ。勤は,幸子の手作りのちらしずしをほおばった。