図書館の新刊コーナーで気になった『
わたしは食べるのが下手』(
小峰書店・刊)です。
少食で食べるのが遅い葵は、食事の時間が苦手。とくに給食は……。「小林さんさ、たぶん君、会食恐怖症だわ」。無理して油淋鶏を飲みこんで気持ちが悪くなった葵は、保健室でクラスの問題児、咲子にそう言われる。実は咲子も食にまつわる問題を抱えていた。
咲子の勢いに押されて二人で給食ボイコットを企てるも、あえなく不発。反対に新任のイケメン栄養教諭に焚きつけられて、給食改革に乗り出すことに……。
学校給食に楽しい思い出や懐かしいメニューを持つ方が多いようです。ドラマ『
おいしい給食』はシリーズを重ね、映画にもなっています。
グルメサイトで“
「給食メニュー」が食べられるお店”の記事が上位に紹介されていることも目にします。
そうした給食に、困っている子がいます。表紙に描かれている、配膳された給食を持つ女の子、牛乳を手にする女子が、そうした子供です。
物語は、
会食恐怖症の小林葵、
摂食障害(
過食嘔吐)の遠藤咲子が、それぞれが語りながら進みます。
小食で、食べるのが遅い。食べてるところを見られるのが嫌。みんなと一緒だと食べられない。完食を強いられるのがしんどい……って。
あー。あーね。
「小林さんさ、たぶん君、会食恐怖症だわ」
「え? カイショク……」
咲子は、
栄養教諭の橘川先生に見抜かれます。
モヤモヤを振り切るように、生徒指導室を出ていこうとするあたしだけど。
橘川先生のそばを通り過ぎようとしたとき、あたし以外には聞こえないぐらいの小声で、先生は言った。
「吐きダコがありますね」
さあっと、血の気が引いた。
葵と咲子、そして
ムスリムのラマワティ ハサナ アブリヤニの3人が“
給食改革プロジェクト”に挑んでいきます。
そこに、
栄養教諭の橘川拓真、さらに給食大好きのコッペ(久野浩平)、それぞれの家族が関わりながら“
食と命”の物語が進みます。
あなたは、
給食が好きですか(好きでしたか)。給食の時間が待ち遠しいですか。
みんなは、
楽しく、美味しそうに給食を食べていますか(食べていましたか)。
小学生高学年、中学生に読んで欲しい一冊です。
そして、学校教育に携わるみなさんにお薦めです。
もくじ
食べられない ── 葵
食べたくない ── 咲子
「いい子」の反乱 ── 葵
正しい改革のやり方 ── 咲子
物言わぬは腹ふくるるわざなり ── 葵
やがて自分になるもの ── 咲子
反転する世界 ── 葵
飲みこむ、吐き出す ── 咲子
綺麗だ ── 咲子
私にできること ── 葵
君の声を聞かせて ── 葵
明日死ぬなら ── 咲子
美味しいということ ── 葵
わたしは食べるのが下手 ── 咲子
要望書
参考文献
困ったときの相談先
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