2-9 植物 - 分布上意味のあるもの(1) (作手村誌57)
『作手村誌』(1982・昭和57年発行)から「第一編 第二章 植物・動物 − 第一節 植物」の紹介です。
標高500mの高原は、そこで暮らす人に“豊かな恵”を与えてくれます。それは、動物や植物の成長・生長にとって良い環境が整っているからです。
その環境も、社会活動などの変化により、“これまでの良さ”が失われているようです。
本章に記録された事柄を“今”と比べ、調べながら読み、“これから”を考え、行動することに活かしたいと思います。
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第二章 植物・動物
第一節 植物
(つづき)
*分布上意味のあるもの
〔ハンカイソウ〕(キク科)中北部の陰湿地に稀に見られる。寒冷期の遺留種で掌状の大形の葉に夏黄色の花を開く。
〔カキノハグサ〕(ヒメハギ科)全村の林下に見られ、名のようにその葉はカキに似る。根はジュズ状で夏橙黄色の花をつける。ほぼ分布の西限に当たる。
〔シシラン・オオバノハチジョウシダ・ヤノネシダ・ホシダ・クリハラン・タキミシダ・アオネカズラ・イブキシダ・トウゴクシダなどのシダ類〕〔シロダモ・イヌビワなど〕大和田から赤羽根にかけての南部地区に見られるが、いずれも暖帯区系のもので本邦の北限と考えられる。
〔コタニワタリ〕(シダ類)木和田地内の川岸で最近鳥居喜一の発見によるもので、従来旭町と鳳来寺山での記録はあるが、極めて分布の少ないものである。
〔ヒメトラノオとイヌヌマトラノオ〕(サクラソウ科)前者は菅沼地内に見られるが、全県的にも少ないものであり、後者はオカトラノオとヌマトラノオとの中間雑種で、全形両者の中間的形態をもち、作手村には比較的多く出るが、珍らしいものの仲間である。
〔暖帯系のもの〕南部地区にはハナミョウガ(ショウガ科)・ヤブウツギ(スイカズラ科=北部まで)・マメヅタラン(ラン科)・ムギラン(ラン科)・カヤラン(ラン科)がある。
〔シダ類〕の中、正月のお飾りに使うウラジロや、コシダ・ホラシノブ・カニクサなども暖地性のもので、作手の場合標高400mあたりのつまり暖・温帯の接点に生育の限界があるようである。また田代地内には珍らしいヤマイヌワラビがあり、鴨ヶ谷〜大和田の徳衛坂はシダの豊富な所で、イノデ・ツヤナシイノデ・イノデモドキ・ヤマイタチシダや大形のイヌガンソク・ヒメワラビ・イノモトソウ・ジウモンジシダ・ハクモシダ・リョウメンシダなどが見られ、また、この峠にはアケボノスミレ(花が大きく、美しいスミレ)が現れる。
赤羽根から杉平へ下りる道端の林下には、コゴミとかトウキチロウとか呼ばれ、ワラビやゼンマイと同様に幼生を食用にするクサソテツの群落があリ、杉平へ下りた所の道端の岩場にはハコネシダがある。なお全村に見られるシダとしては、ベニシダ・ヘビノネゴサ・ヒメワラビ・オクマワラビ・シノブ・ヤブソテツ・チャセンシダ・ゲジゲジシダ・ナライシダ・ミサキカグマ・クマワラビ・サトメシダ・ハシゴシダ・ハリガネワラビ・ヤワラシダ・シケチシダ・シケシダ・イヌワラビ・ヌリワラビ・シシガシラ・トラノオシダ・ノキシノブ・ミツデウラボシ・クジャクシダなどが主なもので各地区に散見することができる。
〔トウゴクミツバツツジ〕(ツツジ科)葉が極めて多毛で、その毛が最後まで残るタイプの変種で、分布の限界点であると考えられる。
〔シラタマホシクサ〕(ホシクサ科)と〔イワショウブ〕(アヤメ科)この両者とも元来作手村には自生しないもので、現在松ヶ田地内と本宮山スカイライン人工湿原にあるのは、豊橋市から移植し生態研究中のものである。
(つづく)
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注)これまでの記事は〈タグ「作手村誌57」〉で
注2)本誌の本文内で、縦書き漢数字で書かれている数値は、本稿では横書きに改めて表記している。
注3)これまで、“作手村の植物”について、次の記事を掲載しています。
◇作手村の自然(1) (つくで百話 最終篇)(2020/12/05 集団「Emication」)
◇作手村の自然(2) (つくで百話 最終篇)(2020/12/08 集団「Emication」)
◇作手村の自然(3) (つくで百話 最終篇)(2020/12/10 集団「Emication」)
◇1.(6) 植物と動物 - 村の植物 (わたしたちの村)(2021/05/31 集団「Emication」)
◇発見!「つくでの草花」