朝,もう雨は降っていませんでしたが,空には雲がいっぱいでした。
その後,徐々に雲に代わって青空が広がって,
晴れの日になりました。ただ,強い風が吹いて,気温ほどには暖かく感じられませんでしたが
,気持ちの良い日でした。
かなり前から,
カエルの鳴く声(?)が聞かれます。田植えの済んだ田は,さながらカエルのコンサート会場です。
カエルの鳴き声に合わせて思わず口遊んですまうのが,童謡『
かえるの合唱』です。
みなさんは,いかがですか。
では,ご一緒に。
♪ かえるのうたが
きこえてくるよ
クヮ クヮ クヮ クヮ …
「あれっ」「あれっ」… 何か違う。
“一緒”なんだけど,あなたと違う歌詞が聞こえてくることがあります。
A ケケケケケケケケ クヮクヮクヮクヮ
B ケロケロケロケロ クヮクヮクヮクヮ
C ゲロゲロゲロゲロ クヮクヮクヮクヮ
D ゲコゲコゲコゲコ クヮクヮクヮクヮ
この「
カエルの合唱」は,戦後に編纂・編集された音楽の教科書に掲載されました。その後も掲載が続き,誰もが一度は歌ったことのあるものとなっています。
原曲は
ドイツ民謡で,スイスの教育者 ヴェルナー・ツィンメルマン氏が日本に紹介しました。これを日本語で歌うために“翻訳”ではなく
”作詞”された歌です。
作詞は,音楽教師
岡本敏明氏で,先の音楽教科書の
編集委員を務めました。
「自分の曲を教科書に載せた」ともとられそうですが,それ以前に「
音楽教育における輪唱の価値」を感じ,子供達のためにたくさんの歌を作りました。
岡本氏の音楽教育を研究した論文は,氏の輪唱への思いを,
唱歌教育に対して,子供の音楽はもっと楽しく生き生きとしたものでなくてはならないと岡本は強く感じていたのである。岡本は「子供は裸足で歌いたいのである。歩き乍ら,仕事をしながら歌っていたいのである」と述べ(略)
輪唱は簡単なメロディを拍節でずらすことによって多声合唱となり,ハーモニーを味わうことができる。尚かつリズムのアンサンブルも楽しめるという絶対音楽としての醍醐味を感得できる格好の教材である,と岡本は認識していた。
と述べていました。
この思いが,子供達のためにたくさんの歌を作っていきます。
(略)この経験から何百という輪唱を私は日本に紹介した。おもしろい歌,楽しい歌,音楽的に高く,しかも1分間で出来る小合唱曲の工夫,創作など,文部省唱歌には一曲も見いだせない心のはずむ歌,私は子供のためにせっせと歌を作った。
輪唱の歌は,すぐに歌えて,いつでも歌えて,もとは単音の曲でありながら,輪唱すれば二部,三部,四部の合唱にもなります。そうした“教材の力”があります。
先の「ケケケケ」「ケロケロ」「ゲロゲロ」は,輪唱によって生まれる
音節(シラブル)のずれによる楽しさを味わえることを第一とすれば,「どれも正しい」ようです。
16分音符がすべて同じ響きであることが効果的であり,日本の地域性や環境により身近に出会うカエルの鳴き声がさまざまで,「カエルの合唱」の歌詞(鳴き声)もさまざまに発展したようです。
岡本氏が「
教室以外で子供達に親しまれること」と望んだ通りに,楽譜に頼らず口伝えに伝承してきたことが表れています。
さて,今夜のカエルは,どんな歌を聴かせてくれるかな。
注1)単音の曲
音符1つに対し音節1つ。「か」「え」「る」「の」「う」「た」「が」…のように。
注2)岡本の詞は
「ケ,ケ,ケ,ケ,ケ,ケ,ケ,ケ」と,原詞をカタカナ表記したもの。