今日は,雨ふりを覚悟していましたが,薄日を感じることもある
曇り空でした。
ちょっと“もうけた”気分の一日でした。
タイトルが赤い文字で書かれ,その背景に鉛筆で描かれた男性の顔があり,裏表紙にはマンガの1コマがある『
小説王』(
小学館・刊)
を読みました。
この絵は,表紙だけでなく挿絵・カットにも使われており,これが
『編集王』(土田世紀・作)のものだと,後でわかりました。
主人公は,大手出版社「神楽社」の文芸編集者 小柳俊太郎です。
大手出版社の文芸編集者・小柳俊太郎と,華々しいデビューを飾ったものの鳴かず飛ばずの作家・吉田豊隆は幼馴染みだった。
いつか仕事を。そう約束したが,編集長の交代などで,企画すら具体的にならないまま時間だけが過ぎていく。やがて,俊太郎の所属する文芸誌は存続を危ぶまれ,豊隆は生活すら危うい状況に追い込まれる。
そんな中,俊太郎は起死回生の一手を思いつく。三流編集者と売れない作家が,出版界にしかけた壮大なケンカの行方は!?
小説の役割は終わったのか? 「STORY BOX」連載時から,作家・編集者・書店員の方々をざわつかせた問題作がついに刊行。小説をめぐる、男たちの熱きドラマ! 『イノセント・デイズ』『95』で大注目の作家が,文芸冬の時代に放つ,激熱のエンタテインメント!!
幼馴染みの編集者と作家を中心に話が進みますが,その二人を取り巻く人々の“思い”や“願い”,そして生きざまにぐっときました。
また,本書のなかで描かれる出版社,出版界,小説,文芸といった“業界”のありように,「これからが心配」の思いを持ちました。
読書メモから。
「昔,ある作家の方がそれは豪気にここでお金を遣ってくれました。何かお返しをしようと考えていたところ,まるでそのことを悟ったかのようにその方は言いました。いつか若い作家がここに来たらいい酒をのませてやってくれって。これがいい酒かわかりませんけどね。その方が新しい本を上梓するたびに祝杯をあげていたものなので」
いまから四週間前,青島から「なるべく金をかけずに人の目に触れさせる手段として,我々の業界ではとにかくネットニュースを重要視しています。理想としては,コメントを出しただけでニュースサイトのトップに名前が載ってしまうような人ですね」と告げられた。
綾乃がそこまで見越していたとは思わないが,たしかにいままでの作品で一人の女性にこれほど執着して寄り添おうとしたことはない。
俊太郎自身は早く書き始めることが正しいとは思っていない。中学生には中学生の,高校生には高校生の“経験しなければならないこと”があるはずだ。現に豊隆はそうした経験値が不足していることにずっと苦しんできた。習作と称してムリに一作書こうとするくらいなら,その時間を来たるべき日のために恋をし,部活をし,本を読むことに充てた方がずっといい。
「ああ。でも,もちろんこんなところで止まらねぇぞ。お前の言う2020年まではやれることは全部やってやる。なんかおもしろいアイディアねぇか?」
「中学生に小説全面無料化!」
「はぁ? なんだ,そりゃ」
「だって,いいじゃないですか。(略)未来の読者作っちゃいましょうよ」
タイトルの「小説王」は,作家の
吉田豊隆あるいは編集者の俊太郎を指しているのだろうと読み進めていましたが,二人のどちらでもありませんでした。
「小説王」は…。
【関連】
◇編集王(
Wikipedia)
【今日の小咄】
お爺ちゃんのお墓参りに行ったときに,三歳の娘はお墓を拝みながら,「早くよくなってください」。
間もなく「彼岸」。